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私的飲みもの史
深田

 まだしばらく梅雨が続くようですが、梅雨が明けると夏本番。じっとしていても汗がにじんでくる時期、冷たい飲み物がどうしても手放せなくなる季節になります。
 
 「キュン」「foo」「ごめんね」「なっちゃん」・・・コンビニや自動販売機で目新しい商品を見つけるとつい買って飲んでしまいます。時には後悔することも...。みなさんが今、イチ押しの飲みものは何でしょうか。
 
 人に歴史あり。人に食べもの史あり、そして飲みもの史あり。
 
 私がいろいろ飲んできた中でまず思い出すのが「ワタナベのジュースの素」です。(生徒のみなさんは知らないでしょう。お父さん、お母さんに聞いてみてください。)
 保育園そして小学校低学年の頃の我が家の台所は「ワタナベのジュースの素」の袋が常備されていました。のどが渇くと自分でその袋からスプーンで山もりにした粉末をコップに入れます。そこに水道水を注いでジュースを作ります。甘ったるくなることや、ほとんど味がしないこともありましたが、作る作業そのものが面白かったのです。オレンジジュースといっても果物のオレンジとは全く無関係のオレンジ色をした飲料水(メロンジュースはメロン色をした飲料水)でしたが、「バヤリース」や「プラッシー」とは意味合いのちがった飲み物だったように思います。この「ジュースの素」がある日突然、我が家の台所から、近所の八百屋の店頭から姿を消してしまったのです。
 
 5・6年生になると夏休みの大半を金沢の祖母の家で過ごしました。そこで毎日3時のおやつとして出てきたのが「三ッ矢サイダー」1本でした。その頃のものは今より炭酸がきつかったようで、ゲップの度合いも激しいものでした。これをコップにあけず、ビンから直接一気に飲めないか挑戦するのが日課でした。最初はほんの一口でギブアップだったものが、慣れてくると何とか一息で飲めるようになります。飲み干した後で盛大にゲフゲフやったものです。これもしばらくやらないとできなくなり、翌年はまた最初からの挑戦となりました。
 
 中学生時代は何といっても「ロイヤルクラウンコーラ」です。部活動が終わると校門わきの店により道するのが習慣でした。当時の中学生にとってコーラが少し大人の飲みものだったように思います。コカ・コーラやペプシと同じ35円で約2倍の量が入ったRCコーラはあまりお金を持っていない私たちの味方だったのです。菓子パンにコーラである程度空腹をいやし、家に着くとすぐに冷蔵庫をあけ、さらに夕食もしっかり食べて夜食も・・・。すごい食欲の時期でした。「アンバサ」「メローイエロー」「ダイエットコーク」「はちみつレモン」さらにはアルコール飲料などなど私の飲みもの史は続きます。が、スペースが足りません。最後に「今まで飲んできたものの中で一番おいしかったのは?」に対する私なりの答えで終わります。
 
 暑い夏、部活直後グラウンドわきの蛇口に直接口をつけて飲んだ水道の水。空腹は最高の味付けというそうです。暑さ、のどの渇き、運動中は疲れるので水分を摂ってはいけないという考えなどが味のないただの水をおいしいと感じさせたのです。
 久しぶりにおいしいと感じてみたくなりました。少し体を動かしてみましょうか。

J-PRESS 1999年 7月号