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森林浴のススメ
深田

 スギ花粉の飛散もほぼ終息。ポカポカとした陽気にさそわれて、アウトドア志向になる季節です。本格的な旅行やスポーツといかなくても、近所の公園でちょっとひと休みというのはどうでしょう。
 
 森林の中に身を置くと、なんとなく気分がやすらぐ、落ち着くと感じられるはずです。森林浴による効果は、あふれる緑を見ること、木々のざわめき、水や小鳥の声を聴くことなどから得られる部分も大きいのですが、森林浴の主役は森林の大気を吸い込むことです。
 
 五月になると「風薫る五月」「薫風の候」が、手紙の時候のあいさつになります。薫風とは生命力の旺盛な若葉の香りを乗せて吹く風のこと。まさに今が森林浴の季節なのです。
 
 森林にはそれぞれ独特の香りがあります。その香りはいろいろなものによって構成されていますが、その代表格が、樹木が自ら作り出して発散させている有機化合物のテルペンというものです。テルペンは、葉から大気中に発散されるものが多く、樹木の葉が密集しているあたりがテルペンの濃度が最も高いのです。放出された後はゆっくりと下に落ちてくるので、木の下で降り注いでくるテルペンを浴びるというのが森林浴のイメージです。
 
 テルペンには、さまざまな薬理効果があります。たとえば、トドマツやエゾマツのポルネオールという成分は眠気覚まし、バラのシラトールは血圧低下など。その他にも抗菌性や鎮痛・鎮静など数多くのものがあります。
 
 森林浴の効果を高めるには3つの条件があります。まず、季節は初夏から夏にかけて。テルペンの放出量は、7~8月がピークで1~2月が最少、その差は5~10倍になります。次に時間。午前中は気温が、まださほど高くなく、空気も穏やかで樹木が放出したテルペンが深く、静かに漂っているため効果的です。午後には気温も上がり、空気が動き、テルペンの拡散が進んでしまいます。最後に天気。風のない快晴の日が最適。どんより曇った日よりスカっと晴れた青空のほうが散歩ゴコロをさそうのは当然です。事実、テルペン濃度も晴れのほうが高く、雨ならば10分の1から50分の1に減少してしまいます。また、風が強いとテルペンの拡散が進んでしまいます。
 
 いろいろ述べてきましたが、理屈ではなくまず行動。「あ~気持ちいい」と感じるだけでも効果があります。天気のいい日は、家からまず一歩外に出てみましょう。

J-PRESS 2000年 5月号