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私は「未津歩 3才」で考えた
石黒

 「ビール5本持ってきて!」「ワインある?!、白ワイン!」「あっ、ウィスキーアンドウォータね!」。数ヶ月前、アジア系某航空会社の国際線で、私の後方の乗客達が発した言葉。どうやら働きざかり「男5人の小旅行」の気配、私の座る機内の前方セクションは、場末の歓楽街の様相。他の乗客は到着地での仕事に備えて仮眠中、客室乗務員は、この5人の酔客に呆然。
 
 1人がトイレから、歯ブラシをくわえながら「コップ、コップ!」。胸にはトイレに備えつけの歯ブラシが数本、「おみやげ!」と友達に配り出す。いつ手に入れたのか、白ワインのフルボトルを手にせまい通路を千鳥足。(中略)飛行機は何事もなかったように、静かにスムーズにスポットに入る。私は出口で客室乗務員のひとりに"Noisy flight !"とポツリ、"I'm sorry, sir."と彼もポツリ。
 
 ここ数年、英語指導の在り方を再検討し「受験英語から脱皮し、コミュニケーション重視の英語教育を!」と叫ばれている。学校現場でも、情報機器や外国語指導助手(ALT)の活用が急速に普及。小学校における「英語教育」もほぼ確立され、ここ数年で本格的に導入されようとしている。ALTが"Hello, how are you today ?"生徒が"I'm fine, thank you."これが授業のスタート。研究を重ねたカリキュラムに従って、徐々に高度な内容へ。「環境」「福祉」「国際理解」までも範疇に入れながら、生徒を「国際人」へと進化させていく。
 
 ファーストフードで「お持ち帰り」、"Take out ?"と聞かれると思たら"For here or to go ?"。ルームサービスに氷を頼んだらパンが届けられる。電話で"Please hold."と言われ、"fold"と勘違いして受話器を置く。レンタカーが街中でパンク、事情説明に20分。私の失敗だらけの10数年、魑魅魍魎の10数ヶ国。
 
 国際化時代を睨み急速に変貌を遂げる英語教育。視聴覚教材、ALT、海外勤務経験者を多角的に活用した英語教育。ゲームを交えた「英語が面白い」「おしゃべりできて楽しい」授業が、私のような日本人に「使える英語」を習得させるのは、「5人の酔客」に国際理解と国際的なマナーを重要視させるのはいつの日か。
 
 学生時代の同級生がタイ王国に生活の場を移し12年。タイ人と結婚し子供2人をもうけ、永住権も数年前に取得。先日タイを訪問した際、家族と一緒にタイ北部:チェンマイ料理のレストランで食事する機会があった。日本人の私も「美味しい!」の連発。突然、3才の娘「みづほ(日本名)」が満面の笑みで近づいて、私のひざに乗る。私の目と口をじっと見つめ、ゆっくり、しっかり、一所懸命に大きな口を開け「ア~、ロ~、イ~!(アロイ:美味しい)」。これが私の覚えた4つめのタイ語である。

J-PRESS 2001年 2月号