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便利さのかわりに
木村

 新学期が始まって早や1ヶ月が過ぎました。新1年生の皆さんは、部活動はもう決まりましたか?多くの高校では、部活動は全員参加だそうですね。やってみたいスポーツがあって運動部に入る人や、おもしろそうな文化部を見つけていくつか掛け持ちする人、活動の内容で決める人もいれば、そこに集まる仲間や雰囲気で決める人など様々です。「部活決まった?」と尋ねると、「写真部」という返事もちらほらと。いつも使い捨てカメラを持ち歩き、年に1回のコンテストに出品していると言う高校生もいました。写真部というと、階段の下にある暗~い部室で、薄赤いライトをつけて「現像」をやっている、そんなイメージが先行してしまったのですが、実際はどうなのでしょうか?
 
 私は小学校4年生くらいのときに初めてカメラを買ってもらいました。ポケットカメラというなんとも簡単なカメラで、フィルムは簡単装着、小学生でも簡単に撮れるものです。画質は決してよいとはいえず、なのに現像料はふつうのカメラと同じくらいかかります。そのカメラで、近所の風景や家族の写真を撮っては、近所のカメラ屋さんに行って現像に出します。当時、現像には丸1日くらいかかり、できあがるのを楽しみに待ったものです。美しいものや感動を残しておきたいと思って撮るのですが、そういうときに限って、ぼやけていたり、失敗していました。
 
 最近では高性能な大型カメラよりも、手軽に撮れるスタイリッシュなカメラが人気のようですね。ポケットに入る薄型のものや首にかけられる軽量のものなど、構えることなく片手でシャッターが押せるようなものです。中には携帯電話のような充電器(クレイドル)を使うものや、「きせかえ」でデザインを変えられるようなお洒落なものまであるようです。私も半年ほど前に小さなデジカメを購入しました。新しい機能を全く知らない初心者でしたが、普通に写真を撮ることくらいはできるようになりました。フィルムだと1本40枚ほどしか撮れないのに、デジカメの小さなメディア1枚で500枚からの写真が撮れるようです。液晶を使えば、撮ったその場で写真を見ることができます。パソコンを使えば現像することなく、撮った写真を大画面で見ることもできます。その気になれば、現像所でもないのに画質の調整が好きなようにできるそうです。そして、こんな便利さと引き換えに、「うまく写っているかな」と仕上がりを待つわくわくした気持ちと、みんなで写真を見ながらわいわい話す楽しみと、近所の小さなカメラ屋さんとの交流を失いかけています。

J-PRESS 2002年 5月号