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カラヤンの遺産 ~ 偉大な指導者とは
木村

 今年もどうぞよろしくお願いします。昨年もこの時期にコラム担当となり、同じ言葉で始めたように思います。そのときには「新・三種の神器」について書かせていただきましたが、1年たった今、ようやく我が家にDVDレコーダがやってきて、毎日フル稼動しています。昔録画した古いビデオも、この機会に残しておこうと挑戦してみたのですが、テープが古すぎて、見るに耐える状態ではありませんでした。大学時代に録画したものの中には、NHKで放送していたクラシック音楽の演奏会のものが何本かと、自分も参加した大学の定期演奏会の録画が1本だけ残っていて、これまた見るに耐えない学生時代の自分も映っていました。
 大学生のときに1年間だけオーケストラに所属していました。大学のサークルなのですが、オケはサークルというほど気軽に参加できるものではありませんでした。「個人レッスンは、先輩のバイトが終わる夜の11時から」「日曜には○○先生のお宅へ伺って」といった調子で、授業とアルバイトと両立させるのは至難の業でした。とにかく、その関係もあって、クラシック音楽に触れる機会は多くあったのですが、当時、世界に名を馳せていた名指揮者のひとりが、ドイツ・ベルリンフィルハーモニー管弦楽団芸術監督・常任指揮者のヘルベルト・フォン・カラヤン(1908.4.5~1989.7.16)でした。演奏の好き嫌いはともかく、「クラシックCDの定番といえばカラ・ベル」というほど多くのCDが今でも出回っています。彼の徹底した独裁者ぶりは有名で、世界最高水準と賞賛される楽団員たちにも有無を言わせることなく、演奏はもちろん、映像を記録する際のカメラアングルから、楽団員の私生活に至るまで、その統制力を発揮したといわれています。その甲斐あってか、名演奏を多く残し、ベルリン・フィルの名前を不動のものにのし上げ、30年間にもわたってクラシック界の頂点に君臨しました。
 1989年、カラヤンの没後はじめてのコンサートで、世界最高の演奏を披露してきたはずのベルリンの楽団員たちは、「新しい指揮者の下では、自分たちの音楽ができる」「メンバーはみな生き生きとしている」と口々に話し、長年に渡って自分たちの考えや意思がほとんど反映されていなかった現状を語っていました。指導者とは。。。「指導者たるもの、どこまでを統制し、自由意志をどこまで尊重するか。相手が成長過程にある中学生や高校生であれば、そのバランスがなおさら大切」と、大学の教職課程の授業で学んだことを改めて思い返しています。2005年、ひとつ成長できる1年にしたいものです。

J-PRESS 2005年 1月号