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応答せよ!スカイキャプテン
木村

 先日、久しぶりに映画を見ました。ジュード・ロウ主演の「スカイ・キャプテン」という作品です。私は「ガタカ」「A.I.」の頃から彼のファンで、今回もあまり内容を知らないまま、ジュード・ロウというだけで見たのです。冒頭から続くセピア色の映像、ヨーロッパ調の美しい風景、優雅な飛行船が空に浮かび、やがて飛行船はニューヨークに到着して乗客が下船する…。ところが次の瞬間、巨大なロボットが大群で登場し、(え?)、ニューヨークの街を破壊し始めました。「ロボットを倒せるのはスカイキャプテンしかいない!」とばかりにゼロ戦風の機体に乗ったキャプテンが登場し、見事ロボットを破壊しました(…)。あとからポスターを見ると、「ニューヨークの街がロボットに!たのむ!スカイキャプテン!」(…子供番組だったの?)。
 
 ハリウッドの映画には「ロボット」や「人の顔を崩したもの」がよく登場します。また、地球外生命体には必ずというほどタコのような軟体動物が用いられます。そして、人々の身元確認には指紋どころか、網膜や血液の検査が日常的に用いられ、いつでもどこでも素生が知られる「逆ユビキタス」の世の中が描かれています。
 
 高校生の間で、電子辞書がずいぶん流行っているそうです。通常、辞書には、その単語の複数の意味やその重要性、使用頻度、具体的な例文などが掲載されているのですが、電子辞書にもそれらが完全収録されています。それなら内容的には何ら問題はなく、膨大な量の単語を調べる高校生にはとても便利なものです。手間をかけずに楽をしている分、それぞれの語が印象に残りにくいという決定的な弱点を除いては、ですが。
 
 最近、「塾のテキストの解答がほしい」との要望が多く、可能な限り解答を作成しています。「配付する書類が私の手書きじゃなぁ」ということで、次第にワープロ作成の時間が長くなり、文字を書くことが一層減っていることも実感しています。お手紙ではなくメールばかり、年賀状はパソコンで作成、伝言はすべて電子化されて伝わり、書くことばかりか、隣人と会話をすることさえなくなりそうな勢いです。会話することよりも便利なデジタル化とは…。
 
 もしも「人と話す」ことに代わるほど便利なものがあるとすれば、いずれ私たちはニューヨークを襲ったロボットたちにとって代わられるのではいかと思います。

J-PRESS 2005年 7月号