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しゃべる
木村

 高校時代の友人からメールが来ました。「ずいぶん久しぶりだと思うけど、どう?」。彼は、学校からの帰り道が私と同じだということもあって、毎日のように一緒に帰っていた友人です。途中、書店で立ち読みをしたり、ゲームセンターに寄ったり。大学生になってからも、「アパートのカギ、ここに置いとくから、来たら勝手に入っとって」といった関係が続いていました。高校生といえば、喋る(しゃべる)のが商売と思うほどよく喋る生き物ですから、学校のことから家のことまで、話さないことはないほどよく喋りました。どちらかと言えば私のほうから話題を出して、彼がそれについてのコメントをする、そんなやりとりがお互い調子よくて、気付いたら長年の友人になっていたわけです。数年ぶりのメールには、懐かしい話題とともに、「君の近況報告嫌いは治ってないだろうから、返事はあまり期待していませんが(笑)」と書かれており、「そんなこと言ってた時代もあったなぁ」なんて振り返る始末でした。
 
 大学入試センター試験がありました。塾でも数ヶ月かけてその対策に取り組んできましたが、いざ「昨年の問題」や「模試」となると、レベルが高い上に計算量が膨大で、実際、歯が立たない生徒も見られました。ただ、今年の数学は少し計算量が少なく、手の出せない問題も減ったようで、失敗した生徒の多くは「計算まちがい」や「勘ちがい」だったようです。さておき、点数に関わらず「東京の大学へ行きたい」「看護やけど、医学部の保健と看護学校とどっちのほうがいい?」という感じで、やはり彼らはよく喋ります。行きたい大学や学部名でさえ、言っていたことが翌日にはもう変わっているくらいです。もちろん、将来を左右する大切なことですから、よく考えて結論を出すべきだと思いますが。
 
 読書は苦手なのですが、「生協の白石さん」を読みました。ご存知の方も多いと思いますが、ある大学生協における、学生と職員の方との「ひとことメッセージ」によるやりとりを本にしたものです。「生協に牛は置いてないのですか?」「単位は売っていませんか?」「好きな子ができたのですが、どうしたらいいですか?」。このやりとりを掲載しているブログも日々更新されているようです。大学生の発想を楽しく読ませてもらいながら、いつの間にか凝り固まっている自分を反省している状況です。
 
 表面的な人付き合いが多い今、何年経っても自分の性格を気遣って声をかけてくれる友人はありがたいものです。喋らないと伝わらないし、喋らないとわからない、喋ることによって情報を得、喋ることによって感性を磨き、喋ることによって人付き合いの難しさを実感し、喋ることによって解決し、喋ることによって友人を増やしていくものだと思います。今がもっとも喋ることのできる中学生や高校生の皆さんには、もっともっと喋って、視野を広げてほしいと思います。

J-PRESS 2006年 2月号