私は「エスカレーター」で考えた石黒
GW中、「高岡御車山祭」を筆頭に、近隣の新湊市(ちびっこ天国in海王丸パ-ク)、越中八尾、南砺市城端(曳山祭)、射水市太閤山(太閤山フェスティバル)などで多彩なお祭が開催され、大勢の人出が予想される。海外脱出組も健在なようで、成田空港では「一日で5万人が出国!」。城西スタッフも負けていない! 高岡市指定文化財「高岡大仏」を、観光客気分で拝みながらの休日出勤。そんな中、近くの老舗百貨店に脱走を試みるのが、私の密かな楽しみ。ちょっと暗めに調光されたエスカレーターで、現役をリタイアした老紳士と隣合せになる瞬間、言い表せない安堵感に包まれる。
エスカレーターに対峙する機会は老舗百貨店だけではない。ショッピングセンター、ターミナル駅、病院、大型家電店などで「1分間に100人、確実に上層階に運びます!」と自信満々、多くの人々を待ち構えている。空港では「新規就航 羽田⇔新千歳、一日10往復」と書かれたフイルムが手摺ベルトにエンドレスに貼られ、広告媒体として活用されている。足元にはご丁寧に「お急ぎの方のために、左側に寄ってお立ち下さい」とのステッカー。地方出身者の私が誤って逆に立っていようものなら、一触即発の気配。
2000年、首都圏に進出した仏系のスーパーマーケット、セールスポイントのひとつに「オートウォーク」と呼ばれるフラットタイプのエスカレーターがある。カートを載せたまま上下階に移動出来る(手を離しても動かない工夫が車輪に施されている)とのことで、このタイプのエスカレーターを体験した事が無い日本の消費者に人気沸騰。商品を満載した大型カートを押す家族連れが左側に立ち、右側を携帯型音楽プレイヤーを装着した地方出身の若者がリズミカルにすり抜けて行く。
2004年夏、名古屋市交通局は地下鉄駅構内でのエスカレーター上の歩行禁止を実施。左側に乗っている人(特に高齢者)が、右側を駆け上がる人に押されて転倒する事故が頻発したため。交通局は注意喚起を促す「歩いたり走ったりしないください」、「二列で立ち止まってご利用ください」と書いたチラシの掲示を開始。しかし心と時間にゆとりの無い乗降客はほとんど無視、今でも右側を空けて乗っている。上海郊外では、オートウォーク上での身体接触による高齢者の転倒、ベビーカーの暴走が日常茶飯事。
数人の同級生に電話で聞いてみた。「動いている上りのエスカレーターをさらに自分で上ろうとまでするアメリカ人は少ない(ケンタッキー在住)」、「タイ人はそんなに急いでまで買い物はしない(バンコク在住)」。そして熊本県八代市出身の友人は「東京もんのマネばして急ぐたぁ、ひゃーんごたったい!(東京の人間のマネをして急ぐなんて、とんでもない馬鹿者だ!)」と笑って答えてくれた。