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私は「ポイントカード」で考えた
石黒

 今朝の全国紙の経済面には「景気感2期ぶり改善」「ゼロ金利解除高まる」の文字が躍る。業況判断DIを業種別に見ると、FIFAワールドカップ特需に沸いた電気機械が、デジタル家電の好調な販売により急上昇。大企業の設備投資計画も2006年以来の高い伸びとの事。マスコミの報道とは裏腹に上着のポケットで息を潜める私の財布、中身の少ない状態が続いて幾年月、「65インチ液晶テレビ128万円」のチラシを横目に仕事に励む。
 
 財布を手に取ってみると最近なぜか厚い。所持金は減少の一途なのに嬉しくなるくらい膨れている。原因は紙幣を圧倒する数のポイントカードの存在。家電量販店に始まり、ドラッグストアー、スーパーマーケット、ホテル、クレジットカード、カメラ店、花屋、そして最後は航空会社、出るは出るは10数枚。「企業の販売戦略に軽々しく乗っている」「いい歳した大人がポイント集めなんて恥ずかしい」との声も。
 
 特典は侮れない。景品表示法の規制があるものの、購入額の数パーセントは消費者に還元される。20万円のパソコンを購入したポイントでデジカメを、100円お買上げごとに1円相当のポイント進呈、15泊すれば1泊無料に、利用金額の0.5パーセントの商品券を、各社はポイント戦争の様相を呈する。航空会社は、「マイレージカード」の特典を武器に顧客の囲い込みに奔走、某日系航空会社の会員数は既に1800万人を超えている。
 
 「千里の道も一歩から」を座右の銘とする私に、去年、特典無料航空券の権利が発生、日本人も疎らな南の島を訪れた。数回訪れた経験が油断を誘発、ガイドブックの隅に載っていた山にレンタカーを走らせた。未舗装の道路をレンタカーで走行、殺風景で展望台以外何も無い、観光客は皆無。「あっ!」、車のキーをインロック。閉ざされたドアの向こうには緊急連絡先が書いてあるレンタカー会社の契約書。手には携帯電話だけが。
 
 エンジンが掛かった車と立ち竦むこと数十分、そこに壊れそうな1台のレンタカー。身長186cm、色白のアメリカ人男性が現れた。「インロック? 助けようか」「携帯があるから大丈夫。ガイドブック持ってる? レンタカー会社の電話番号が知りたい」「HERTZ?」。連絡を試みるがずっーと話し中。「麓まで30分だ、送ろうか? 車はそのままにして」「じゃあお願いしよう」。道中の30分、自己紹介には時間が短過ぎた。
 
 受取った名刺を頼りに彼の人柄をネットで調べた。ロスにある大学の医学部教授でアフリカ各地でHIVを研究する傍ら、孤児院の開設に奔走する毎日。互いの近況や仕事の悩みをメールで語り合う日々が続いた。「ちょっと疲れが溜まったから、9月に高岡に行くよ」、先日連絡があった。

J-PRESS 2006年 7月号