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ケはケータイのケ
石川

 先週、古城公園へ向かう道を歩いていると、自転車に乗った女子高生と某住宅メーカーの営業車が接触しそうになった場面に出くわしました。
 
 女子高生(推定17歳)は片手に携帯電話を持っており、どうやらメールを読むか打つかしていたようで、車を運転していた男性(推定43歳)が「危ないじゃないか、気をつけろ!」と怒鳴って車を降りてくるかなと思ったら、その男性も片手に携帯を持って通話中の様子。二人とも後ろめたかったのか、お互い無傷なのを確認すると無言でそのまま走り去りました。あの二人には、自分や他人の命を危険にさらしてまで伝えなければならない緊急の用件があったのでしょう、きっと。
 
 先月、小腹がすいたのでマックでシャカシャカチキンをパクついていたら、隣のそのまた隣の席に親子連れがやってきました。
 
 ハッピーセットを手にした小さな男の子(推定4歳)は、席に着くと昨日幼稚園で友だちのヨウちゃん(推定5歳)と遊んだときのことを嬉しそうに一所懸命話し始めました。お母さん(推定30歳)は、片手でポテトをつまみながら「ん?あぁ、うん、うん」と気の無い返事を繰り返し、もう片方の手で持った携帯の小さな画面から視線を外さず、目にもとまらない速さでキーを連打していました。あのお母さんには、わが子の話を聞くより大事な用件があったのでしょう、きっと。
 
 5月末に政府の教育再生懇談会が首相へ提出した報告には、「子供を有害情報から守るため小中学生が携帯電話を持たないように関係者に協力を促す」とあります。また、石川県野々市町では小中学生に携帯電話を持たせない運動を展開中だそうです。
 無論、有害情報に免疫が無い小中学生を大人が守る必要性は感じます。
 
 でも大人なら大丈夫でしょうか? 以前見たTV番組では、「ケータイ無いと死ぬ」と言って毎日何十通もメールをやり取りし、勉強中も机に携帯電話を置いて5分おきにメールチェックする高校生を取材していました。自分のように「急ぎなら職場に電話するだろう」と考えて勤務中は携帯電話を手にしない者には理解できません。ただ、将来彼らが通話しながら運転して誰かを傷つけないか、我が子の話を真剣に聞いてあげられるか、メールを気にし過ぎて仕事がおろそかにならないか、老婆心ながら心配です。
 
 こそこそ陰口をたたいてイジメの温床になる「学校裏サイト」や犯罪者を結びつける「闇サイト」が問題になっています。携帯電話はとても便利な反面、そういう危険も併せ持っています。近い将来、車の運転のように携帯電話を持つためにマナーだけではなく免許も必要な時代が来るかもしれません。

J-PRESS 2008年 6月号