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「白くまくん」はだいじょうぶ?
藤浪

 「白くまくん」といっても某家電メーカーのエアコンの話ではありません。私はホッキョクグマのことを親しみを込めてそう呼んでいます。(もちろん、動物園でしか会ったことはありませんが)今、北極海の氷上で生活している白くまくんたちが絶滅の危機に瀕しているそうです。
 
 なぜでしょうか。北極海を覆っていた氷が解けて、えさ場がなくなってしまったからです。2007年9月には北極海の氷の面積が観測史上最小になったとの報道もありました。えさが取れなくなった白くまくんたちはやせ細り、餓死するものもいるとのことです。この事実を対岸の火事と見ることもできるかもしれませんが、わたしにはどうもそのようには考えられません。
 
 地球温暖化の原因については様々な意見があります。人間の活動が主要な原因であるとの見方、太陽エネルギーの放出量が変化している、地球の公転軌道の変化等々。地球は温暖化していないという見方もあるようです。
 事の真相究明は専門家に任せるとしても、北極海の氷の減少やヒマラヤの氷河が消滅しつつあること、オーストラリアの干ばつ、ツバルの洪水等、地球が深刻な問題に陥っていることだけは確かです。では、人類には何か打つ手があるのでしょうか。
 
 先日、とあるテレビ番組を見ていると、北極海の氷が減少したのをいいことに、これまで採掘したくてもできなかった天然資源を大規模に開発している様子を目にしました。「こらぁ、あかんわ。」こんな言葉が口をついて出てきました。地球の危機にさらに追い討ちをかける人間の貪欲さを目の当たりにして言い知れぬ虚しさを感じました。
 
 私は科学技術の進歩が問題を解決してくれるなどとは考えていません。なぜなら科学技術は道具に過ぎないからです。どれほど便利な道具でも、使う人によっては良い目的にも悪い目的にも用いることができます。つまるところ、問題なのは道具ではなく道具を使う人間のほうだと思うのです。
 テクノロジーを飛躍的に進歩させてきた人類は地球環境の大きな危機に直面している今、人に対する思いやり、動物たちへの気遣い、地球を大事にする気持ちの点でも長足の進歩を遂げることができるのでしょうか。
 
 「白くまくん」はだいじょうぶ? その答えは、気候変動のスピードと人間性向上の速度のどちらが速いかにかかっているように思えてなりません。

J-PRESS 2008年 7月号