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「カレー」の作法
深田

 プロ野球の日本シリーズが10月31日に始まりました。この文章が皆さんの目にふれるときにはどのような結果あるいは途中経過となっているでしょうか。
 
 野球に関して今年一番私の心に残っている出来事。それは、シアトル・マリナーズのイチロー選手が大リーグに移籍して、9年連続200本以上のヒットを打つという新記録を達成し、メジャーの歴史に名を刻んだことです。
 
 イチロー選手の天才ぶりについては、いろいろなメディアで数多く取り上げられてきました。そこでよく言われるのが、「とにかく意志が強い」「体調管理がしっかりしている」「ケガがない」(今年は胃潰瘍や足の不調もありましたが)ということです。
 
 そんなイチロー選手について、2年ほど前のテレビ番組で紹介されたエピソードがいまだに記憶にあります。
 その番組では球場だけではなく自宅での彼の様子も紹介されていました。
 驚いたことに、シーズン中の自宅での昼食で彼が口にするのは、夫人が何日か分を作り置きした手作りカレーだけなのです。飽きることもなく、毎回カレーなのです。
 イチロー選手の場合、ほかにも多々あるそうですが、とにかく毎日“同じ行動パターン”で過ごすのです。
 
 「ジンクス」「縁起をかつぐ」という心理的に弱い状況ではなく、“同じ行動パターン”をくり返すことで、精神的に安定した状態となり、本人が持っている最大能力が発揮できるというのです。
 
 自分自身のことを振り返ってみると、「○時から×時まではこれを」「次の×時から△時まではあれを」という毎日規則正しい生活をしていないことを強く感じてしまいます。皆さんも同様では?
 
 「今日は9時からあの番組があるから、勉強は10時スタート」「メールがたくさん入っているので、これが終わってから自分の部屋に」「今日はテストがあって疲れた、自宅での勉強はなし」などということが多いかもしれません。
 けれども、“毎日同じ時間に同じことを同じようにする”ことによって、きっと多くのことが得られるのではないでしょうか。かたわらで見ていると、何も変わらず過ごしているようでも、内部では少しずつ、しかし、大きな変化が起きてくるのでしょう。まさに「継続は力なり」です。
 
 もちろん、「毎日カレーを食べてみんなでイチローになろう!」と言っているわけではありません。「同じ時間に起きる、食事する」「同じかばん、筆記用具を使う」何でもかまわないと思います。是非、何か一つ毎日続けることを始めてみませんか。

J-PRESS 2009年 11月号