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クはクスリのク
石川

 土曜日、朝起きると喉が少し痛い。部屋の明かりがついたままだ。寝ぼけ頭で状況判断……。昨夜は録画しておいた「ミュージックステーション」を観ながらそのまま寝てしまったらしい。
 
 よっこらせと声に出しながら立ち上がり、とりあえず風邪薬を飲んでおく。朝食も食べないうちに薬を飲むのは良くないと分かっているけど、経験上、これくらいの喉の痛みは放置すると悪化して長引くと判断。立ち上がるとき「よっこらせ」なんて言うぐらいの歳まで生きていると、それくらいの判断もできるようになる。っていうか、それくらい十代のうちに判断できるようになれ、自分。
 
 ついでに、これをネタにコラムでも書くかとパソコンを立ち上げ、眠気覚ましにBGMを流す。シャッフル機能で選曲をパソコンに任せると、1曲目はドリカム。元気が出そう。なかなか良い判断だ、えらいぞパソコン。
 
 人間には自己治癒力が備わっているので、薬に頼らないのが理想だとは思う。でも、自力での回復が難しかったり時間がかかったりする場合は、薬を上手く使うのも悪くない。
 
 もちろん「薬も過ぎれば毒となる」の諺もあるように、使いすぎてはいけないだろうし、使う状況を間違えれば逆効果になりかねない。病気を治す代わりに望まぬ副作用が生じたりもする。頭痛がひどい時、バファリンを4錠まとめて飲むことがあるが、あれは良くない。分かっているならやめろ、自分。
 
 また、発熱したとき解熱剤で熱を下げることができるが、体内に入り込んだ細菌やウイルスを殺すために免疫反応として発熱している場合は、熱を下げると治りが遅くなる。そういえば、自分は発熱に耐性があるのか、38℃ぐらいだと気づかず仕事してるなぁなどと考えていると、そこからの連想だろうか、仕事と薬の類似性に思い至る。
 
 ――と、この辺りまで書いて記憶が途絶。風邪薬の副作用で眠ってしまったらしい。頬にキーボードの跡。BGMもいつしかドリカムから陽水。さらに八月は夢花火と消えて、サザンへ。
 
 閑話休題。
 
 勉強は、自分よりも経験豊富な人の力を借りる方がいい。しかし、最初から人をあてにしたり、頼りすぎては身につかない。塾は、「よく効くけど副作用は小さい薬」のような存在であるべきなのかな、などと寝起きの頭で考える。
 
 最近、苦くなくて飲みやすい薬が増えたが、それも善し悪しかもしれない。「良薬口に苦し」の言葉の通り、少しぐらい苦いほうが薬に頼らず自分で治そうという気になるのではないか。美味しくてよくキク薬は依存性が強すぎる。
 
 気づけば浜辺の天使は過ぎ去り、BGMは酒井法子に変わっていた。
 ――やってくれるな、パソコン。

J-PRESS 2010年 8月号