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「雑草」の作法
深田

 せっかくきれいに草取りしても、一週間もすればまたいっせいに芽を出す。取っても取っても次から次と生えてくる雑草。特に猛暑・酷暑の今年の夏は閉口しました。
 
 「たくましい」「強い」というのが雑草に対してのイメージ。そんなある日、ラジオから「植物学では、雑草は『弱い植物』とされています」と聞こえてきました。そこでは、次のような話が。
 
 雑草は実力ではなかなか他の植物に勝てないので、悪い条件の中で生き残る方法を心得ているのです。
 
 たとえば、タンポポ。
 
 最近では、丈夫な外来のセイヨウタンポポなどに追いやられ、在来のタンポポを目にすることはほとんどなくなってしまったと思っていませんか。
 
 実は、それが在来のタンポポの戦略なのです。在来種は春に花を咲かせ、夏になると葉を枯らして、根っこだけで過ごします。「夏眠」といって、夏の間は地面の下で眠ります。なぜ「夏眠」するかというと、夏は多くの草が生い茂る季節なので草丈の低い在来タンポポは葉を広げても太陽の光が届きません。そのため、在来タンポポはあえて競争から降りるのです。他の植物が枯れてくる秋から冬にかけて葉を広げ、春になると花を咲かせます。つまり、争いを避けて日本の季節に沿うような生き方をしているのです。
 
 一方、外来のタンポポは日本の四季に合わせる暮らし方を知らないので、一年中花を咲かせる性質を持っています。「強い」というイメージの外来タンポポは他の植物との競争には強くないので、自然が豊かで他の植物が育ちやすいところでは広がれません。そのため、道ばたや公園の片隅など、他の植物がない所を選んで繁殖します。その結果、外来のタンポポが目立つのです。自然が豊かな場所では、今でも在来のタンポポが見られるのです。在来のタンポポを身近な場所から遠ざけているのは外来のタンポポではなく、私たち人間だと言えるのです。
 
 タンポポに限らず「雑草」と呼ばれる植物は逆境で生きることを得意としています。雑草にとって逆境はピンチではなくチャンスなのです。逆境とされる環境は、植物にとって生きやすい環境ではありません。ならば、逆境を乗り越えさえすれば大きな成功をつかむことができるのです。
 
 ここに私たち人間が生きていくうえでのヒントがありそうです。生きにくいと言われる今の時代「しなやかに、したたかに」をキーワードに生きてみようと、雑草から教えられたような気がしました。

J-PRESS 2010年 10月号