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オは黄金のオ
石川

 最近あまり見かけなくなりましたが、文字数に制限がある新聞の見出しなどでは、ときどきゴールデンウィークのことを「黄金週間」と表します。
 
 それで思い出したのですが、身の回りのいろいろなものに「黄金比」という数字が隠れています。約「5:8」、つまり長辺が短辺の約1.6倍になる比です。昔からこの比率は、形が美しく安定して見えると言われています。
 
 例えば、手元にキャッシュカードや名刺などがあれば、その縦横を測ってみてください。ピッタリではありませんが、長辺が短辺の約1.6倍になっていませんか? たしかに、倍率がこれより大きいと細長く、小さいと太く、なんだかバランスが悪く感じてしまいます。
 
 また、パルテノン神殿などの建造物やミロのヴィーナスなどの芸術作品にも黄金比は隠れています。パルテノン神殿の幅は高さの約1.6倍、ヴィーナスの下半身は上半身の約1.6倍、さらに身長も下半身の約1.6倍になっています。
 
 ピラミッドの底辺も高さの約1.6倍。あのどっしりと安定した形は、やはり黄金比のなせる技なのでしょう。
 
 ところで、約1.6倍と表してきましたが、数学を担当としている身としては正確な値も紹介しておかなくてはなりません。その値は、1 + √52倍。この値を√記号を知らない人にもわかる式で表現すると、
 1 + √52 = 1 + 1 1 + 1 1 + 11 + 1
となります。よく分からなくても、美しい式だと思いませんか? 美しく安定したバランスを表す値は、その式まで美しいのかもしれません。
 
 ところで、これと雰囲気が似ていて、有名な値を表す式があります。
 ある有名な値 = 3 + 12 6 + 32 6 + 526 + 72
 この値が分かりますか? 答えはπ(パイ)。そう、3.14159265358979……でおなじみの円周率です。黄金比とどこか相通ずる美しさを感じます。
 
 えっ、クイズのネタとかぶってる? クイズの原稿を見てから書いたんじゃないかって? そんな美しくないことはしません。ぐ、偶然ですよ、きっと。

J-PRESS 2011年 5月号