マは魔法のマ石川
「充分に発達した科学技術は、魔法と見分けが付かない。」とアーサー・C・クラークは述べています。たしかに、江戸時代の人が飛行機や自動車やコンピュータを目にすれば、摩訶不思議な妖かしの術だと思うかもしれませんし、縄文時代の人から見れば、こするだけで火がつくマッチですら神の御業に見えるかもしれません。
でも、今の科学技術で何でも出来るわけではありません。SF映画に出てくる「空間に浮かび上がる立体映像」や「遠くの星まで行ける宇宙船」などは、現代の自分たちの目から見ても不思議ですし、ドラえもんの「どこでもドア」や「タイムマシン」に至っては魔法としか言い様がありません。
自分は、昔から物の仕組みを知りたいという欲求が強くありました。5歳の頃、家にあったラジオを分解して怒られたのを覚えています。その後も電話機、ポット、机、時計、掃除機、テレビ、ビデオデッキ、パソコン……仕組みが知りたくて、何でも手当たり次第に分解しました。組立て直すと、部品やネジがときどき余るのが困りものでしたが。
ただ、最近の機械はどんどん複雑になり、部品も微細化してきていて、素人が手を出しにくくなっています。昔は分解すると仕組みがだいたい理解できたものですが、最近の機械は、まさに魔法の箱と化しています。
自分が知るわずかな期間でさえ技術は劇的に発達しましたから、今後の発達は予想もつきません。今は実現不可能に思えるものでも、人間はさまざまな技術革新で実現してきました。「空を自由に飛びたいな」という願いが飛行機を生みました。将来はタケコプターだって実現されるかもしれません。未来から見れば、現代の我々もきっとマッチに驚く縄文人と同じに見えるでしょう。
昨年の震災で福島第一原発が大きな被害を受けました。その結果、「人間が制御できない原子力なんて使うからしっぺ返しを受けるんだ」「科学の発達が人間を幸せにするとは言えない」などという悲観的な意見も聞きます。でも、個人的には科学の発展は生活を快適にするし、原子力もある程度自由に制御できる時代は来ると思っています。今は無理に思えても、放射能汚染を短期間で除去する技術や、地震・津波の被害を最小限に抑える技術も実用化される日がくると信じています。
科学技術が、人魚姫の声を奪った悪い魔女の魔法ではなく、シンデレラを幸せにした良い魔法使いの素敵な魔法であることを祈って、2012年、明けましておめでとうございます。