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ワはワクワクのワ
石川

 先月、自分用としては4年ぶりに新しいパソコンを購入。
 
 メーカーからの発送通知で翌日届くと分かったとき、「初期設定して、よく使うソフトをインストールして、アップデートにセキュリティ……めんどくさいな」と思ってしまった自分に気づいて愕然としました。
 
 小学6年生で初めてパソコンを買ってもらったときは、家に配達されるやいなや即開封、「先にご飯食べられ」という親の言葉も耳に入らず寝食を忘れてセッティング、プログラミングに熱中していて、ふと窓の外を見ると空が白んでいる。そんなワクワクが止まらない状態が何日も何日も続いたものです。
 
 新しい物や出来事が楽しくて、未知との遭遇に毎回興奮し、心躍らせていた自分はどこへ行ってしまったのか。結局、新しいパソコンが届いた日には開封せずじまいでした。
 
 そういえば、最近は読んでない本も溜まっていく一方です。買ってしまうと「いつでも読める」と安心するのか、いわゆる「積ん読」状態になってしまい、ハードカバーや新書や文庫、いろんなサイズのタワーが乱立しています。
 
 自分は新しいものに対する好奇心やワクワクする心を失ってしまったのか……と肩を落としながら積ん読タワーを見ると、数年前に買った小説が目に留まりました。いい機会だからと読み始めてみると、ページをめくる手が止まりません。登場人物たちの行動にハラハラ、二転三転のストーリーにドキドキ。なんだ、新しいものに出会って浮き立つ心が、まだちゃんとあるじゃないかと安心しつつ読み終えたころには近所からラジオ体操の音楽。新しい朝は来ましたが、新しいパソコンの開封はさらに一日延びてしまいました。
 
 ただ、立ち上がるときに「ヨイショ」と口にしてしまう回数が増えたのと同様、新しいことへ取り組もうとするのに腰が重くなったのは間違いなさそうです。
 
 億劫がらずに未経験のことへ積極的にチャレンジしてみよう。衣類は黒系統ばかりだから、今度は赤い帽子でも買ってみようか。メガネもスリムタイプばかりじゃなくて、たまには丸眼鏡もいいかな…布団の上でゴロリと横になりながら、そんなことを思いました。

J-PRESS 2012年 8月号