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宇宙戦艦ヤマト
木村

 先日、声優の納谷悟朗さんが亡くなられました。ご冥福をお祈りいたします。さて、私の中で納谷悟朗さんといえば、何といってもルパン三世の銭形警部。ルパンは子供のころも、大人になってからも何度となく見た作品で、銭形警部はなくてはならないレギュラーメンバーのひとりです。マスコミでは、「宇宙戦艦ヤマト・沖田艦長の声優さんです!あとはルパンの銭形警部、風の谷のナウシカ・ユパ様の声も」といった序列。何年か前に、懐かしいアニメ、銀河鉄道999は見る機会があったのですが、今回を機に「あぁ、宇宙戦艦ヤマトかぁ」と、さっそく見てみることにしました。
 
 テレビシリーズの第1話、なんと古い映像でしょう。輪郭の線は太い、登場人物はみな眉が太い、顔が大きい、ひとつの場面で複数の人間が同時に動く等々。言葉遣いや話し方、声のトーンも昭和の時代を物語っているようです。いや、私は決してアニメに詳しいとかではないのですが、さすがに1970年代の作品ともなれば、40年の歴史がありますからね。子供のころは、この映像をどきどきわくわくして見ていたわけです。
 
 こんどは場面設定。銀河系の遥か彼方にある大マゼラン星雲、この中に第1シリーズの旅の目的地、イスカンダル星が存在しています。地球からの距離は片道148,000光年だそうです。これは、光の速さで進むと148,000年で到着するという距離ですね。第2シリーズで登場するアンドロメダ星雲は、この大マゼラン星雲からさらに遥か遠方に位置しているのですが、そこを出発したという白色彗星帝国が、なんと太陽系の中にある地球というたったひとつの星を標的に、わずか50日程度でやってきます。いったいどうやって進んでいるのでしょうね(笑)。…こんなことを言い始めると「空想科学読本」みたいですが、そこがアニメゆえの面白さでもあるわけです。それより、今から40年も前にこのような場面設定がなされていたというのが驚きです。ちなみに本編の中には、「やっと銀河(系)まで帰ってきたなぁ、ここまで来れば、もう自分の家の庭先に着いたようなものだな」といったセリフがあります。うーん…。
 
 4月から、日曜の夕方に「宇宙戦艦ヤマト2199」と題して、現代版のヤマトが放送されています。偶然、40年前の作品を見終わったところだったので、ちょっと見てみることにしました。当然ながら、輪郭や眉は細いし、ゲームセンターの戦闘もののようなきれいな映像、もちろん声優はすべて一新されています。登場人物の髪型や言葉遣いはすべて現代の、それでいてストーリーやテーマソングは40年前と同じであることに少し違和感を感じながら、いつの間にか日曜の番組から目が離せなくなっています。

J-PRESS 2013年 5月号