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私は「ジャンボジェット」で考えた
石黒

 今から40数年前、中学校の薄暗い廊下の片隅に掲示された●▲中学生新聞、『夢の大型旅客機 500人を乗せて空を飛ぶ』のタイトルが躍る。「そんなこと絶対不可能だ!」、稲作専業農家に生まれ育って15年、飛行機とは全くの無縁の毎日、実物を間近で見たことも皆無の中学生にとっては驚愕の一瞬。(大型旅客機Boeing 747は1969年初飛行、その後1500機以上が生産され、日本でもJ社が112機を購入・使用、A社も同様に)
 
 それから10余年後、学生時代は帰省の足(翼)として、社会人になってからは学習塾業界団体の定例会議の足として数え切れないくらい搭乗。機内前方の螺旋階段(その後は直線状に)を上がると二階客室、異次元空間がオヤジの好奇心を擽る。コックピットが二階最前方に位置するため、一階客室前方は急に細くなる形状をとる。『座席番号81A』、お手洗いに行くとき不用意に席を立ち、頭上の投影プロジェクターの角で額を幾度も強打。
 
 「機長の■★です。ただいま警告ランプが着陸用車輪の不具合を示唆しております。最悪の場合、小松空港への緊急着陸(胴体着陸)が避けられない状況…」。それからの一時間、500人弱の乗客を乗せたジャンボ機は能登半島近海を旋回、着陸に必要な最小限の燃料に絞りこむ。週末の最終便、テーマパーク帰りの家族連れはパニック状態、CAの叫び声が交錯、広大なキャビンは阿鼻叫喚の世界。(警告ランプの誤作動でした)
 
 広く愛され続けマリンジャンボ、ポケモンジェットの特別塗装機まで登場、日本政府専用機としても活躍中。ところが1980年代の石油危機、昨今の世界同時不況を境に大型航空機に対する需要は激減。国内J社では既に全てのジャンボ機が退役、A社でも来る3月末日にラストフライトを迎える。中小型機への代替、『個性が希薄な商品の大量提供』から『個々のニーズを細かく捉えた商品提供』へ。航空各社は『軸足を個人に!』を模索中。

J-PRESS 2014年 1月号