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アはアカルイミライのア
石川

 「犯罪の低年齢化」「犯罪の凶悪化」新聞の見出しだけ読んでいると、どんどん怖い世の中になっているような気がします。でも法務省が作成している「犯罪白書」を見る限り、若者の犯罪件数が増えているとは思えませんし、凶悪事件の件数も減少傾向にあります(犯罪白書は法務省のウェブサイトで自由に閲覧できます)。ではなぜ新聞やテレビは「犯罪の低年齢化」「犯罪の凶悪化」などと煽るのでしょうか?
 
 戦後は、戦災孤児が多くいました。生きるためには悪いと知りつつ他人の物を暴力で奪い取って…という子も多かったと想像できます。こういう事件は多すぎて、いちいち報道されなかったはずです。しかし、今はそんな事件が減ってしまったため、逆にひとつの事件に注目が集まりやすくなり、詳細に報道されれば強く印象に残ります。
 
 世の中が平和で暮らしやすくなってきたからこそ、却って悪いニュースが目立ってしまうのでしょう。
 
 結核が不治の病と言われていたころは、少し患者数が増えても話題にはなりませんでしたが、現在では小規模な流行でも注目されます。今後は他の難病だって治癒率が高まるはずです。将来は病気で死亡すると新聞の一面に載る大ニュースになる時代が来るかもしれません。(そのころ新聞というメディアがあるか分かりませんが)
 
 女性の権利が十分に認められていなかった時代、女性蔑視の行動や発言があっても報道などされませんでしたし、ほとんどの人は気にも留めなかったでしょう。しかし今ではセクハラ野次が飛ぶと大ニュースです。
 
 これらの現象は、世の中が少しずつだけど確実に良い方向に向かっている証拠ではないでしょうか。
 
 田中将大投手が登板した試合で負けると、大きな話題になるのも同様の現象でしょう。
 
 汚れた壁に落書きされても目立ちませんが、真っ白な壁だととても目立ちます。凶悪犯罪事件が少ないからこそ、恐ろしい事件のニュースが目立つことになります。
 
 綺麗なものを汚さないように気をつけることは大切です。でも、もし汚れたら落ち込む前に掃除すればいいじゃないですか。勉強だって、間違ったことを落ち込む前に、どうすれば良くなるか一緒に考えましょう。
 
 根拠なく不安を煽るような言説に惑わされず、良いものは良いと認めた上で、さらに改善していくほうが、「世の中悪くなっていく一方で…」とネガティブになるよりは健全だと思います。

J-PRESS 2014年 7月号