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私は「三角ヤード」で考えた
石黒

 6月初旬、定例の学習塾団体の総会に出席、市ヶ谷の某ホテルは業界の重鎮達で同窓会の様相、山積する審議事項は粛々と消化され2時間の長丁場が終了、逃げるようにJR市ヶ谷駅へ。電車を乗り継ぎ羽田空港にトンボ返り、那覇行きのフライトに滑り込む。777-300、地上職員が気を利かせ前方1-Dの座席をアサインしてくれたものの、右も左もスーツで武装した企業戦士、堪らず後部セクションへ。
 
 機内で画像の整理をしていると「わぁ綺麗、あっ勝手に覗いてご免なさい」「私も最近、一眼レフカメラ買ったんですよ」「美味しい沖縄そばのお店、ご存知ですか」、CAの言葉はエンドレス。(中略)定宿の豊崎(糸満市に隣接)のビジネスホテルで朝を迎える。一泊5,400円のホテルだが、程よい大きさのプールと大浴場完備、そして画像の朝食(ブフェスタイル)。都会の喧騒から僅か2時間のフライトで桃源郷が。
 
 糸満市人口59,840人、商工業と海人(うみんちゅ)の町・沖縄時間が流れる町の両方を併せ持つ。路線バスがオバァを乗せヨンナーヨンナー(ゆっくりゆっくり)と町を巡り、懐かしさが残る糸満ロータリーで方向を変える。西へ300m、糸満公設市場が姿を現す。観光客は皆無、売り手・買い手の双方が生粋の糸満市民(いちまんちゅ)、旧暦の5月4日『ユッカヌヒ』に行われる糸満ハーレーをこよなく愛す。
 
 『三角ヤード』と呼ばれる一角がある。入り口にある魚屋のタカ兄が「あっ来てるの。これミーバイ、ホテルで食べればいいさぁ」、横を平和食堂のおじさんがカキ氷を運ぶ、泡盛に心酔する竜ネェの奇声がトタン屋根に響く。Cafe naminamiの看板に誘われ一休み。「アイスコーヒーお願いします」、物憂い微かなBGM、木枠の窓の向こうに紫煙を燻らす漆喰職人。「イシグロさんですよね?」、cafeの主人が口を開く。
 

J-PRESS 2014年 8月号