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私は「島くとぅば(沖縄本島の方言)」で考えた
石黒

 過日沖縄県糸満公設市場にギャラリーを構える『漆喰シーサー工房ニャン山』を訪問。主宰する上原新吾氏には、受験生全員に毎年合格祈願シーサーを製作していただいている。いつも那覇空港から糸満市へはレンタカーだが、今回は公共交通機関を利用。『ゆいレール』を一区間(赤嶺駅)で降車、そこから路線バスで。改札口の50歳位の駅員に「89番のバスに乗りたいんですが」「エレベーターうりれぇーから バス停あいびーんどー…(1)」。
 
 沖縄バスで25分500円、『糸満市場前』で降車、小宴会が催される居酒屋に向かう。6人のいちまんちゅ(糸満人)に南砺市特産の干柿・金沢名物あんころもちを振舞おうとした瞬間、大切なカメラが無い!! テーブルに並んだスーチカーを横目に、バスの那覇・糸満営業所に問合せること一時間、糸満バスセンターでカメラは一夜を過ごす。翌朝バスセンター営業所、60歳位の職員が「なまからぬ旅や きぃちきらんねーでーじすんどー…(2)」。
 
 レンタカーで桜の名所八重岳へ。本部半島は日本一早く1月中旬に桜(寒緋桜:かんひざくら)が開花することで有名、桜の木々が濃い桃色を競い合う。八重岳周辺は『タンカン』(ポンカンとネーブルオレンジの自然交配種)の産地で名を馳せ、何軒もの直売所が軒を連ねる。車を停め果樹農家の作業場を覗く。選果機の轟音の中で働く80歳位のおばぁ、袋詰めの手を止め「タンカン うさきーなあいびーくとぅふくろんかいちみてぃむっちーくわ…(3)」。
 
 本部半島を北上し備瀬集落へ。フクギ並木を散策すること数時間、古民家からは三線の物憂い音色、牛車が人を乗せてよんなーよんなー(ゆっくりゆっくり)と細い小道を抜けて行く。海岸線に出る、伊江島の城山(愛称タッチュウ)がコバルトブルーの水面に映える。子供達が歓声を上げながら防波堤を駆け抜ける。午後三時、猫の額くらいの番屋で泡盛片手の40歳位の海人(うみんちゅ)が二人。「泡盛ぬむみ?よんなーうさがりよー…(4)」。

J-PRESS 2015年 2月号