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外国人が日本語文法を学ぶ
小野

 先日、日本語ペラペラのアメリカ人と話す機会がありました。両親がアメリカ人。子どもの頃から日本在住で、苦労することなく英語、日本語の両方がしゃべれるようになったらしいのですが、なんともうらやましい限りです。
 
 しかし私たちが外国語を学ぶときに難しいと感じるように、大半の外国人にとっても日本語を学ぶことは難しいと感じるはずです。実際、私の近所に住んでいるアメリカ人は、何年も前から日本語勉強中と言いながら未だにほとんど日本語が話せません。奥さんがロシア人で、ロシア語、英語、日本語がペラペラという人なので、きっと奥さんに頼りっきりなのでしょう。
 
 私たちも留学さえすれば、アメリカに住みさえすれば英語が話せるようになれると思っていたら、彼と同じことが起きそうです。
 
 ところで、外国人が日本語を勉強するときにどんなテキストを使っているのでしょうか。ちょっと気になったので、日本語文法のテキストを見せてもらいました。すべて日本語で書かれているのはともかくとして、初級~中級者用テキストでこんなことを理解しながら勉強してるなんて、よくも日本語が嫌いにならないと思える内容です。
 
 その内容を1つ紹介してみると、理由を表すとき、「~ので」または、「~くて」と言う言い方をします。日本人ならおそらく意識もせず、国語の授業でも習ったことがないおもしろいことが書いてありました。
 
 「このコートは高いので買えません。」「このコートは高くて買えません。」確かにどちらも理由を表す表現です。「時間がないので急いで食事をしてください。」「時間がなくて急いで食事をしてください。」後者は変な日本語になってしましました。何が違うのでしょう。
 
 もう少し見てみましょう。「うるさいので聞こえません。」「うるさくて聞こえません。」どちらも問題ないですよね。「お腹が痛いので帰ってもいいですか。」「お腹が痛くて帰ってもいいですか。」やはり後者はおかしくなります。
 
 どうして「~くて」は使える時と、使えない時があるのでしょうか。
 
 日本人なら理屈抜きで、言える。言えない。と判断できますが、外国人に教えるとなると、どんな説明をすればいいのでしょうか。
 
 テキストを読んでみると、事実を言うときはどちらでも使えますが、人にお願いをしたり、自分のしたいことを言うときは「~ので」だけしか使えないという説明でした。そんなことは考えたこともありませんでしたが、外国人がそれを理解したところで、実際に使いこなすには大変だと思います。全部「~ので」で言ってしまえば間違いないから、と教えてしまいそうです。
 
 結局、日本語も、英語も使い慣れて、身につけてしまうのが理想的な学習方法なのかもしれません。
 
 それにしてもこんな難しいことを考えなくても日本語が使えるなんて日本人として生まれてきて良かったと思える一時でした。

J-PRESS 2017年 9月号