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旦那さん
小野

 今年も受験シーズンとなりました。そばで見ている私たちも毎年のこととはいえ緊張してしまします。高校受験が終わっても大学受験。大学の後は就職試験。一人前になるまで(なっても)なかなか安心できそうにありません。
 
 さて、1人の子供が大学卒業まで22年間にかかる費用について調べてみると養育費、学費などもろもろ合わせると標準で2500万円以上はかかるそうです。自分の為に貯金すればかなりの額になりますから我が子の為とはいえ、それだけでも親に感謝です。
 
 「旦那」という言葉があります。その家の主人のことを「お宅の旦那さんは・・」などと言ったりしますが、これはインドの昔の言葉、サンスクリット語の「ダーナ」が語源となっています。本来の意味は「与える」という意味で、自分が稼いだお金の大半を妻や子供のために使い、休日も家族のために使ったりするので旦那さんと言われるようになったのかもしれません。男女、大人、子供問わず、自分の持っている有形、無形のものを与える人が本来の「旦那さん」ということなのでしょう。
 
 かつての流行語に「くれない族」というのがありました。「~してくれない」とよく口にする人やそういった思考の強い人のことを表した言葉です。私も他人や周りの環境に対しての不平不満を抱いてしまったときに、自分も「くれない族」かと振り返って思うことがあります。旦那さんとは真逆の思考ですね。
 
 西洋にこんな寓話があります。ある国の王様が、通りの真ん中に大きな石を置き人々の反応を見ることにしました。最初に通ったのが酔っ払い。石にぶつかり、「誰がこんな所に石を置きやがったんだ」と怒りをぶつけてふらふらと去っていきました。次に荷車を引いた農夫が通りました。大きな石がじゃまで通るのに一苦労。「こんな石が道の真ん中にあったら危なくて通れないじゃないか」と不平をこぼしながら去っていきました。その後も、誰一人として不満こそ言うもののその石を動かす人はありませんでした。1ヵ月後、王様はその通りに国民を集めて言いました。「実はこの石は私が置いたものだ。しかし今日まで誰1人として取り除こうとするものはいなかった。これは私の政治の欠陥である。私が取り除こう。」そういって石を動かすと、石の下に金貨・宝石の入った袋が置いてあり、こう記してありました。「この石を取り除いてくれた者に与える。王」
 
 自分の責任じゃないよ、と言いたいところを「旦那さん」になって「じゃあ、私が~しましょう」というのはなかなか実行できることではありません。大人になれば男性なら旦那さんと言われることがあるかもしれませんが、時期を問わず本来の「旦那さん」を目指したいものです。

J-PRESS 2019年 2月号